日本の空港は、いまや国内有数の商業フロアになりつつある
日本の主要空港が計上する物販・飲食売上を合算すると、大手百貨店グループに匹敵する規模になる。ただし集計方法は空港ごとに異なり、業績の明暗もくっきりと分かれ始めている。

日本の主要空港運営各社が2026年3月期に計上した物販・飲食売上を合算すると、総額は3000億円を優に超える。各社が公表した決算資料によれば、これは中堅百貨店グループに匹敵する規模だ。
規模は大きいが、集計基準は空港ごとに異なる
羽田空港の3ターミナルを運営する日本空港ビルデング(JAT)は、当期の物品販売業セグメントの売上高が1555億8300万円(前期比4.2%増)だったと開示した。成田国際空港会社(NAA)はリテール事業の売上高が1268億円(同2.6%増)、福岡国際空港(FIAC)は自社直営の物販事業で294億円、セントレアは商業セグメント売上高225億円(前期の232億円から減少)と、それぞれ公表している。ただし4社の「リテール」の定義は一致しない。JATとセントレアは自社の物販売上そのものを計上するのに対し、NAAの数値はテナントからの構内営業料収入も含む。FIACの数値も空港全体の物販ではなく、あくまで自社直営分に限られる。したがって単純な横並び比較ではなく、規模感をつかむ目安として捉えるべき数字だ。
羽田の免税フロアは勢いを増す
JATの勢いは新年度に入っても続いている。2026年4〜6月期の物品販売業の売上高は394億円(前年同期比6.5%増)、うち国際線売店売上は255億円(同10.1%増)で、羽田免税店の売上は四半期として過去最高を更新した。同社によれば、中国の訪日自粛の影響は羽田空港では軽微にとどまった一方、免税品を卸売りする地方空港では影響が続いているという。円安を追い風に人気の輸入ブランド商品の在庫を確保したことが奏功したとし、免税品事前予約サイトではこれまで扱いのなかったシャネルの香水・化粧品も新たに取り扱いを始めた。通期の売上高は2898億円(前期比7.4%増)、営業利益は450億円(同16.8%増)だった。
成田は増収増益も、来期のリテール収入は減収を見込む
NAA全体の業績は民営化以降で最高の年となった。営業収益は前期比5.9%増の2794億円と5期連続で最高値を更新し、旅客数は4258万人、うち外国人旅客数は過去最高の2410万人だった。一方でリテール事業の伸びは全社の5.9%増に対し2.6%増にとどまり、物販・飲食収入に限れば957億円(同1.0%増)とさらに小幅な伸びだった。それでも空港内店舗の売上高合計(NAAが直接収益計上しないテナント分も含む)は2022億円と3年連続で最高値を更新している。NAAは2027年3月期のリテール事業収入について、一部店舗の改装休業の影響で1242億円(同2.1%減)と減収を見込む。短期的な落ち込みは投資と位置づけているようだ。親会社株主に帰属する当期純利益は351億円から270億円へ減少したが、同社はこれを施設維持管理費や老朽化設備の更新費用の増加、固定資産除却損によるものとし、リテール事業の減速が原因ではないとしている。
地方空港の明暗:福岡の黒字転換とセントレアの中国路線減便
福岡国際空港(FIAC)は初の単年度黒字を達成した。純利益は56億8100万円(前期は10億1400万円の赤字)で、総売上高は過去最高の旅客数を背景に710億5900万円(同20%増)となった。国際線旅客数は10%増の939万人と伸びを牽引した。自社直営の物販事業はセグメント別売上高で最大となっており、2025年12月には国際線エリアに新たに13店舗をオープンさせ、攻勢を強めている。対照的なのがセントレアだ。商業セグメントの売上高は225億円と、前期の232億円から減少した。年間を通じて中国路線の減便が続いたことで免税店の売上が押し下げられた一方、一般物販店の売上と総旅客数(1159万人)はともに増加した。セントレアは来期の旅客数を1100万人と、今期実績を下回る水準で見込んでいる。
唯一数字を開示しない関西エアポート
オリックスとヴァンシ・エアポートが主導する関西エアポートは、関西・伊丹・神戸の3空港を運営し、当期の営業収益は2713億円(同11%増)、営業利益は696億円(同8%増)、当期純利益は402億円(同9%増)といずれも過去最高を更新し、旅客数も5401万人(同6%増)に達した。ただし、物販・商業関連の売上高は一切開示していない。空港各社の開示が総じて進みつつある中で、関西エアポートは唯一の空白といえる。日本の「空港リテール」は、依然として運営会社ごとに5通りの異なる基準で語られているのが実情だ。
10億円単位・2026年3月期(各社独自のセグメント定義のため単純比較不可)
floortokでは現在、これら5社の決算をRetail Earnings(決算データベース)で継続的に追跡しているほか、各空港の月次旅客数やセントレアの月次物販売上の内訳もMarket Data(指標データベース)で確認できる。空港ごとの明暗がどちらに転ぶかを見極めるうえで、現時点で最も分かりやすい手がかりとなるはずだ。