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分析

台湾が中国を抜き、訪日消費額でトップに立つ

観光庁の最新の四半期調査によると、訪日外国人の消費のうち買物代が占める割合は全体の4分の1に達した。一方で「誰が使っているか」の顔ぶれは様変わりし、消費額が前年から半減した中国に代わって台湾が首位に立った。

編集イラスト — 免税フロアで買い物袋を提げて歩く訪日客たち(日本の百貨店)。
イラスト:floortok.com

観光庁が4月15日に公表したインバウンド消費動向調査によると、2026年1-3月期の訪日外国人旅行消費額は2兆3,378億円で、前年同期比2.5%増となった。floortokの読者が最も注目する買物代は5,895億円で全体の25.2%を占め、宿泊費(36.7%)に次ぐ大きさとなった。

この買物代の構成比は、実は前年の29.4%(6,713億円)から低下している。代わって宿泊費・飲食費・交通費・娯楽等サービス費の構成比がいずれも上昇した。少なくとも集計全体で見る限り、訪日客は財布をレジ前だけでなく旅行全体により幅広く使うようになっているということだ。

顔ぶれが変わった「誰が使っているか」

より大きな変化は、消費を牽引する国・地域そのものにある。2026年1-3月期に消費額でトップに立ったのは台湾で、3,884億円(前年同期比22.5%増)。前年同期にトップだった中国(5,478億円)を上回った。中国の同期間の消費額は2,715億円まで落ち込み、前年同期比50.4%減。韓国(3,182億円、同12.7%増)にも抜かれ、3位に後退した。

買物代だけを見ると、この構図はさらに鮮明になる。台湾からの訪日客は同四半期に買物代だけで1,297億円を支出し、全国籍・地域中で最大となった。これは中国の890億円を約46%上回る規模で、中国の消費総額自体はなお他の多くの市場より大きいにもかかわらずだ。台湾は買物代が自国消費額全体に占める比率(約3割)も調査平均より高く、銀座や心斎橋の免税カウンターで存在感を放ってきたことと符合する。

現場への示唆

日本の旗艦店で在庫や人員、クライエンテリングの予算配分を担う立場からすれば、実務的な教訓は「想定すべき訪日客像」がもはや反射的に中国人客ではないという点だ。1人当たり旅行支出は前年比0.6%減の22万1,363円とほぼ横ばいだった一方、一般客(クルーズ客を除く)の数は3.4%増加しており、今期の増収は客単価ではなく客数によるものだったといえる。そして、その客数を支える国・地域構成は、中国の消費総額が半減する一方で、台湾・韓国へと明確にシフトしている。

注目すべきは、中国の落ち込みが前年同期の反動という一時的な現象なのか、それとも構造的な変化なのかという点だ。いずれにせよ、単一の国籍の消費習慣や暦だけを前提にした売り場づくりは、台湾・韓国の比重が高まったより幅広い客層構成を前提にした売り場づくりに比べ、以前よりリスクの高い賭けになっている。

2026年1-3月期 国籍・地域別 訪日消費額(前年同期比)

前年同期比(%)

+22.5%台湾+16.6%米国+12.7%韓国−3.5%香港−50.4%中国
観光庁 インバウンド消費動向調査 · 作図:floortok

値引き幅は人民元とユーロでさらに大きい

国籍の変化の裏には、通貨の綾がある。中国の消費総額が半減する一方で、人民元の日本での購買力はむしろ高まり続けた。円がドルに対してよりも、中国・人民元やユーロに対してさらに速く下落しているためだ。米連邦準備制度(FRB)の月中平均でみると、2024年1月以降、1元は20.4円から23.7円へ、1ユーロは159円から185円へと、いずれも約16%上昇した。ドル(146円→161円、約10%)を上回る。平たく言えば、2024年初めに中国の買い手にとって約4,900元だった10万円の買い物は、いまや約4,200元——およそ14%安い——であり、ユーロでもほぼ同じ値引きとなる。ドルで支払う米国人が得る9%の割安感を上回る。つまり今期の中国の後退は、レジ前での購買力が弱まったからではない。むしろ中国人客が直面する値引き幅はさらに深まったのだ。

2024年1月と比べ、各通貨で買える円はどれだけ増えたか

1通貨あたりで買える円の増加率(2024年1月比、%)

+16.3%人民元+16.1%ユーロ+9.9%米ドル
米連邦準備制度(FRED)月中平均、2024年1月と2026年6月の比較 · 作図:floortok

売り場の客層構成を組み立てる立場からすれば、これが順位表の裏にある機微だ。ユーロと人民元は、いまや日本でドル以上に円を買える。問われるのは、どの国籍がより多く来店するかだけではなく、店内に入った一人ひとりの通貨がどれだけ多くを買えるかである。