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視点

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Bリーグ×ラグジュアリー · 全3回の第2回

どのクラブにもブランドの「口座」がある。その多くは引き出しすぎている。

ラグジュアリーにおいて、ブランド・エクイティは「口座」のように振る舞う。値引きや露出過多は売上として計上される引き出しであり、クラフトやサービスはコストとして計上される預け入れである。Bリーグのクラブはいま、同じ帳簿に向き合っている。

イラスト:チームジャージが並ぶ壁の前を通り、チケットゲートからコートへ向かうファン。
イラスト:floortok.com

第1回で私は、Bリーグの新ルールがすべてのクラブをブランドビジネスに変えたと論じた。Bプレミアへの参入は、観客動員、売上、アリーナで決まる。いずれも好成績のシーズン一つで買えるものではない。人々に関心を持ってもらうことで、勝ち取るしかない。

ラグジュアリーは長くこのルールの下で生きてきた。エルメスやシャネルが生き残るのは、今四半期に最も多くのハンドバッグを売るからではない。10年後も人々がそれを欲しがるからだ。アップルやラルフ ローレンからグッチ、LVMH、プラダに至るまで、さまざまな企業で働いてきた中で、私はその欲求を貸借対照表上の「口座」と考えるようになった。あらゆる意思決定は、預け入れか引き出しのどちらかである。売上とは、その「口座」から引き出すときに手にするものだ。

Bリーグのクラブも、まったく同じ「口座」を持っている。負けた後の寒い水曜日にもまた足を運び、座席やジャージーに定価を払い、友人を連れてきてくれる。ファンのその意欲こそが残高である。本稿では、クラブがどうやってその残高を積み増すのか、気づかないうちにどう取り崩してしまうのか、そして取締役会がどう記録をつければよいのかを論じる。

どのクラブも公表しない「口座」

国際会計基準の下では、企業は自ら築き上げたブランドの価値を貸借対照表に計上できない。ブランドが帳簿に現れるのは、誰かがそれを買ったときだけだ。LVMHが2021年にティファニーを約158億ドルで買収した際、その価格の多くはブランドとのれんとしてLVMHの帳簿に計上された。その前日、ティファニー自身の帳簿には、それは存在していなかった。

スポーツクラブも同じ盲点を抱えている。クラブにブランドの価値を尋ねれば、観客動員数、スポンサー収入、SNSのフォロワー数が返ってくるだろう。どれも有用だが、どれも残高そのものではない。

より大きな問題は、損益計算書が預け入れと引き出しを正反対に扱い、しかも誤った方に報いることだ。

  • 預け入れはコストとして現れる。 アリーナの飲食やトイレの改善、研修を受けた試合運営スタッフの増員、ユースアカデミー、一つの区画も埋まることのない町での地域プログラム、そしてクラブに合わないという理由で断ったスポンサー。
  • 引き出しは売上、あるいは達成したKPIとして現れる。 平均観客数を押し上げる無料チケットのまとまった枠、新たに売れたLEDボード、ロゴを付けただけの安価なライセンス商品、あらゆるものに貼られたスポンサー名。

損益計算書しか読まない取締役会は、事実上、「口座」を取り崩すことで報酬を得ているに等しい。それがいまの日本でかつてなく重要なのは、Bプレミアの審査基準が数値に報いるからであり、その数値は、本来測るべきものを弱めるやり方でも達成できてしまうからだ。

引き金として働く目標

ファッションのライセンスビジネスには、よく知られた罠がある。ライセンス契約の中には、売上が一定の水準を超えるとロイヤルティ率が下がる条項を含むものがある。成長への合理的なインセンティブだが、モラルハザードにもなりうる。売上目標を達成する最も安上がりな方法は、売れやすいものを、どんな価格であれ、より多く売ることだからだ。

Bプレミアの参入基準もまた、引き金となる水準である。平均4,000人の観客を集め、12億円の売上を上げれば、トップディビジョンという報酬が得られる。合理的なインセンティブではある。しかし、本来報いるはずのものを壊すやり方でも達成できてしまう。無料チケット、安価なグッズ、ブランドを安っぽくするスポンサー契約で基準を金で突破したクラブは、数字を達成し、ファンを失う。誰も定価で席を売ろうとしないうちに半額チケットでシーズンを始めれば、ホーム開幕戦は満員になる。だがそれは、残りのシーズンを通じて、その席の本当の価値がいくらなのかをすべてのファンに教えることになる。

参入した後も圧力は止まらない。リーグ自身の更新規程では、ある年に売上基準を満たせなかったBプレミアのクラブは、その地位は維持できるものの、最大5,000万円の制裁金を含む処分を受ける可能性がある。3年連続で満たせなければライセンスは更新されず、クラブはB.LEAGUE ONE(Bワン)に降格する。現在の基準は売上12億円で、そのうち少なくとも9億6,000万円はバスケットボール関連事業によるものでなければならない。平均観客4,000人についても、同様の「3年ルール」がある。つまり、引き金は毎シーズンリセットされる。一度ばらまきで基準を達成したクラブは、翌年も、その翌年も、値引きを期待するよう自ら仕向けてしまったファン層から、再び達成する方法を見つけなければならない。

引き出し

ラグジュアリーにおいて、「口座」が一つの大きな失敗で空になることはめったにない。もっともらしく見える判断の積み重ねによって、少しずつ流出していくのだ。どれも月曜の会議では容易に正当化できる。クラブも同じ三つの判断に直面している。

無料チケットは、名前を変えた値引きである

値下げは在庫の問題を解決し、信頼の問題を生む。定価で買った顧客は、後で同じ品が値下げされているのを目にするたびに、待てば得をすると学ぶ。米国のアクセシブル・ラグジュアリーは、2010年代にこれを痛い思いをして学んだ。2016年、コーチは北米の百貨店約250店舗、卸売網のおよそ4分の1から撤退すると発表した。染みついてしまったプロモーション頼みの循環から抜け出すためである。顧客が自社製品に感じる価値を立て直すために、売上の減少を選んだのだ。対照的に、エルメスとルイ・ヴィトンは革製品を一切値下げしない。定価を貫くシーズンの一つひとつが預け入れである。

クラブにとってのそれは、無料あるいはほぼ無料のチケットである。観客動員の目標があれば、空席をばらまきで埋めたいという誘惑が生まれる。平均4,000人という目標は、きわめて目に見えやすい。座席は埋まって見える。平均値も健全に見える。しかし無料で入場したファンは、その席の価値を学んでしまった。その隣に座るシーズンチケット保有者も、同じことを学んでいる。

サンプリング(試供)と値引きの間には、明確な線がある。ラグジュアリー・ビューティーは絶えずサンプルを配る。サンプルとは、また来る理由を伴った最初の体験だからだ。地元の学校のチームを初めての試合に無料で招き、その後のオファーを用意して名簿に名前を残してもらうのはサンプリング、つまり預け入れである。会場を満員に見せるために無料チケットの枠を常設するのは値引き、つまりたまたまKPIを達成するだけの引き出しである。

露出過多と、ごちゃついたコート

認知は預け入れである。どこにでもあることは引き出しである。バーバリーはその教科書的な事例であり、日本はその中心にあった。何十年にもわたり、同社の日本事業は三陽商会とのライセンス契約を通じて運営され、独自のディフュージョンラインを持つ百貨店の大衆ブランドへと育て上げられた。2000年代半ばには、同社は世界で20を超えるライセンスを抱え、そのチェック柄は戸惑うほど多様な商品に付けられていた。その修復には10年近くを要した。ライセンスを買い戻し、2015年に三陽商会とのライセンスを終了させ、日本を直営化したのである。ピエール・カルダンはさらに極端で、最盛期には約800のライセンスを抱えていた。誰もがその名前を知っていた。それにプレミアムを払う人はほとんどいなかった。

クラブにとっての同等物は、すぐに見つかる。コートがバス停の広告のように見えるまで、あらゆる面に貼られたスポンサーロゴ。一度洗えば駄目になる安物に付けられたクラブのエンブレム。1日に20回投稿しながら何も語らないSNS。プレーの合間の演出があまりに騒がしく、バスケットボールのほうが休憩時間のようになる試合日。どれも売上やリーチをもたらす。そしてどれも、このクラブは何にでも名前を付けるのだとファンに伝えている。

体験を売る相手を制御できなくなる

どこで売られるかは、何を売るかと同じくらい多くを物語る。円安になれば、東京は世界で最も安くラグジュアリーを買える場所の一つとなり、価格差を狙う転売業者が押し寄せる。2015年、シャネルはクラシックバッグの価格を世界で統一し、中国ではおよそ5分の1値下げし、欧州ではいくつかを同程度値上げした。これにより、裁定取引の余地の多くが一挙に消えた。2022年にはロレックスがさらに踏み込み、独自の認定中古(Certified Pre-Owned)プログラムを立ち上げ、二次市場の一部をブランド自身の基準の下に取り戻した。

クラブも独自の二次市場に直面している。完売したダービーやプレーオフの試合では、チケットが最初から行くつもりのない人々の手に渡る。日本ではすでに法律でチケットの不正転売が規制されているが、ブランドの問題は合法かどうかにとどまらない。新しいファンがあなたのクラブで最初に経験するのが見知らぬ人からの吊り上げられた価格だとしたら、あなたは気づかないうちに引き出しをしてしまったことになる。公式で適正価格のリセールの仕組みは預け入れである。目立たない試合にも足を運ぶ人々のために大一番を確保しておく、会員向けの優先販売期間もまた預け入れだ。

預け入れを装った引き出し

ファンがその手法を不快に感じれば、「口座」を守る行為は裏目に出る。2018年、バーバリーは値引き流通に回らないよう、1年間で約2,860万ポンド相当の売れ残り在庫を廃棄していたことを開示した。意図は価格の一貫性を守ることだった。しかし世間の反発がそれを引き出しに変え、同社は数か月のうちに廃棄をやめた。

クラブにおける類似例は、行き過ぎた価格設定である。最も大きな試合で市場が許容する限りの価格を付けることは、価値を守っているように感じられる。だがその結果、忠実な常連客がシーズンを通じて待ちわびた試合から締め出されるなら、「口座」は打撃を受ける。ある判断が預け入れになるのは、ファンがそれを預け入れとして体験した場合に限られる。

預け入れ

朗報は、「口座」は意図的に積み上げられるということだ。ラグジュアリーにおいて、私は四つのレバーを考える。最も強いメゾンは、そのすべてを同時に引く。どれもそのままアリーナに置き換えられる。

希少性:最高の席を「勝ち取るもの」にする

エルメスは、職人を育成できるペースでしか革製品の生産能力を拡大しない。最も人気の高いバッグは、今も一人の職人が最初から最後まで仕上げている。需要は毎年、供給を上回る。それは意図されたものだ。その差は失われた売上ではない。それこそが「口座」の残高である。

クラブはバスケットボールを配給制にはできないが、特権を配給制にすることはできる。シーズンチケットの順番待ちリストは、スポーツにおいて「口座」が健全であることを示す最も明確なサインだ。プレーオフの座席を最初に選べる会員、ある月のホームゲームにすべて来場した人だけが手にできる限定ジャージー、お金では買えない試合後のコート訪問。どれもロイヤルティを目に見えるものにし、ライトなファンに目指す目標を与える。目的は人を締め出すことではない。また来ることに意味を持たせることだ。

ストーリー:自分のクラブにしか言えないことを語る

ボッテガ・ヴェネタは、一つのフレーズで哲学全体を表現した。「自分のイニシャルだけで十分なとき(When your own initials are enough)」。ロゴがあふれる市場で、ロゴがないことを自らの象徴とし、顧客はそのブランドを一文で友人に説明できた。

第1回で取り上げた、頭一つ抜け出しつつあるクラブには、いずれもそうしたストーリーがある。佐賀バルーナーズは県のチームになった。琉球ゴールデンキングスは、どこで戦おうと沖縄を背負っている。どちらのストーリーも、毎年夏に入れ替わるロスターの話ではない。どちらも、変わることのない場所とそこに暮らす人々の話である。勝利に触れずに「私たちは〜のチームだ」という文を完成させられないクラブは、まだストーリーを持っていない。

体験:アリーナこそが旗艦店である

2003年にアップルがアップル銀座を開いたとき、それは米国外で初めての直営店であり、ブランドが日本の顧客を真剣に考えているというメッセージになった。同じ年、プラダはプラダ青山店(ヘルツォーク&ド・ムーロン設計)を開いた。どちらも店舗の採算だけでは正当化できなかった。どちらも預け入れであり、そのリターンは事業の他のあらゆるところに現れた。

新しいアリーナは、Bリーグの旗艦店である。千葉ジェッツの観客数は、2024年に完成した自前の本拠地LaLa arena TOKYO-BAYに移ると、2倍以上に増えた。しかし建物は約束をするだけだ。約束を守るのは人である。ブティックではそれはクライアントアドバイザーであり、アリーナではチケットをスキャンするスタッフ、家族の席を覚えている案内係、ハーフタイムにビールスタンドで働く販売員、迷子に対応するスタッフである。ほとんどのファンはコーチに会うことはない。だがこうした人々には試合のたびに会う。彼らこそがブランドであり、ほとんどのファンが目にする唯一のブランドの姿なのだ。

一貫性:一つのクラブ、すべての接点で

シャネルが2015年に行った価格統一は、一貫性への預け入れだった。顧客がどこで買っても、同じバッグがおおむね同じ価格になる。一部の市場で売上を手放してでも、すべての顧客がすべての市場でその価格を信頼できるようにしたのである。

クラブにとって一貫性とは、ポスターの上のブランドが、ゲートでも、アプリでも、学校訪問でも、そして苦情への対応の仕方においても、同じブランドであるということだ。キャンペーンでは温かく地元に根ざしているのに、入場ゲートでは混乱しているクラブは、二つのことを同時に信じるようファンに求めている。ほとんどの人は、悪い方を信じるだろう。

クラブのブランド台帳

ブランドを貸借対照表に載せられないのであれば、取締役会は独自の計算書を持つ必要がある。これは、私がすべてのクラブに、毎シーズン更新しながらつけてほしいと考えるページである。

預け入れ引き出し
その後のオファーと結びついた、初回無料の試合会場を埋めるために常設された無料チケット枠
シーズンチケットの順番待ちリストと会員優先当日に安く売られる同じ席
クラブと街に合ったスポンサーお金を払えば誰であれ、あらゆる面にロゴ
長く使えるよう作られ、定価で売られるグッズエンブレムを付けただけの安価なライセンス商品
研修を受け、定着した試合運営スタッフ開幕の前の週に雇われた臨時スタッフ
公式で適正価格のリセールの仕組み大一番を転売業者に任せること
生え抜きの選手と地元のアカデミー来シーズンには地元のファンが誰一人名前を挙げられないロスター
街のストーリーを軸に組み立てた試合日どのアリーナでも見かける、借り物の照明演出

「口座」を読み解くには、いくつかの指標をまとめて、時間を追って見ていく必要がある。勝敗や売上と同じ真剣さで扱うべきだ。

  • 有料入場者数(総入場者数とは別に)と、定価で販売したチケットの比率。
  • シーズンチケットの更新率と、順番待ちリストの長さ。
  • リピート来場:初来場者のうち、同じシーズン中に再び来場した人の数。
  • 平均チケット単価(ファン1人あたり)と、それが値引きなしで上昇しているかどうか。
  • 定価で販売したグッズと、値引き販売したグッズの比較。
  • ファンのNPS。スコアと同じくらい、コメントから読み取る(詳しくは第3回で)。
  • スポンサーの更新と、パートナーが更新するのはブランドが合っているからか、価格を下げたからか。

どれも単独では完璧ではない。だが組み合わせれば、観客動員という見出しの数字が隠してしまう傾向が見えてくる。

クラブの役員会への問い

もし今日、あるクラブの経営陣と向き合うなら、私はこう尋ねるだろう。

  • 平均観客のうち、どれだけが入場料を払っているのか。無料チケットをやめたら、そのうちどれだけが戻ってくるのか。
  • 目標の中に、どんな犠牲を払ってでも数字を達成することに報いる「引き金」になっているものはないか。今シーズンの売上項目のうち、実際には引き出しであるものはどれか。
  • 実際には預け入れであるコストはどれか。損益計算書にそのリターンが見えないという理由だけで、それを削っていないか。
  • 結果に一つも触れずに「私たちは〜のチームだ」という文を完成させられるか。
  • 初めて来たファンは、ゲートでも、アプリでも、コート上でも、同じクラブだと認識できるか。
  • 最初のBプレミアのシーズンを終えて「口座」を監査したら、引き出しより預け入れの方が多いだろうか。

どのクラブにとっても、これらに心地よい答えがあるわけではない。そこが肝心なのだ。Bプレミア時代には成績による降格がなくなり、人件費に上限が設けられた。弱いブランドを覆い隠してきた従来のやり方は、もはや通用しない。生き残るのは、何十年にもわたって売上を生み出すものを守るために、いまの売上を少し手放すことを受け入れられる経営者のいるクラブである。

次回予告

預け入れと引き出しは、「口座」がどう動くかを説明する。しかし、「口座」が何の上に築かれているかは説明しない。第3回では、私がLVMHでベルナール・アルノーから学んだフレームワーク、すなわちヘリテージ、品質、イノベーションを取り上げ、それが誕生からわずか10年のリーグにとって、そしてそれを試合のたびに現場で届ける人々にとって何を意味するのかを問う。

出典

「視点」は署名入りの論考です。見解は筆者個人のものです。