floortok

視点

·
ラグジュアリーに学ぶ · 全3回の第2回

NPSは数字ではない。経営のあり方である。

クローズド・ループ、根本原因の是正、チームへのコーチング。そして、最高の顧客体験がそれを届ける人から始まる理由

NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、ビジネスで最も広く使われている指標の一つであり、私の経験では、最も広く誤解されている指標の一つでもある。多くの組織はこれをKPIとして扱う。スライドに載る一つの数字として月に一度確認し、上がれば祝い、下がれば言い訳をする。そうした使い方では、NPSが教えてくれることはごくわずかだ。だが経営のオペレーティング・システムとして使えば、企業の聞き方、学び方、率い方を変えることができる。

小売、ラグジュアリー、消費財ブランドの現場で、私はその両方を見てきた。両者の違いは、決して調査そのものにはない。調査の後に何が起きるかにある。

すべての接点は取引である

このシリーズの第1回で、私はブランド・エクイティが貸借対照表の勘定のようにふるまい、あらゆる意思決定は預け入れか引き出しのどちらかだと論じた。そうした取引の大半は、役員会議室で行われるわけではない。売場で、電話口で、配送車の中で、アフターサービスの工房で、一日に何千回も行われている。自分を覚えていてもらえたと感じてブティックを後にする顧客は、預け入れの瞬間を目にしたことになる。修理の連絡を3週間待たされる顧客は、引き出しの瞬間を目にしたことになる。

正しく運用すれば、NPSはほとんどの企業にとって、こうした取引の明細に最も近いものになる。顧客一人ひとりについて、勘定が増えたのか減ったのかを教え、コメント欄を通じてその理由も教えてくれる。だからこそ、NPSを月に一度の単一の数字として扱えば、その価値の大半を無駄にすることになる。月に一度残高を確かめるだけで取引明細を無視する、そんなやり方で銀行口座を管理する人はいない。

質問するのは簡単な部分だ

NPSは、ベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルドが2003年にハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した論文「成長に必要な唯一の数字」(The One Number You Need to Grow)で提唱したものだ。その土台は、たった一つの質問にある。「当社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか」。顧客は0から10の尺度で答える。9か10と答えた人が推奨者、7か8が中立者、0から6が批判者である。スコアは、推奨者の割合から批判者の割合を引いて求める。

シンプルさこそが強みである。同時に、それは落とし穴でもある。質問があまりに簡単なので、数字を集めた時点で仕事は終わったと思いたくなる。実際には、スコアは出発点にすぎない。価値は、その背後にある三つの規律にある。クローズド・ループ(顧客への迅速なフォロー)、根本原因の是正、そして人へのコーチングだ。ベインは前の二つを、現場での「インナーループ」と組織全体での「アウターループ」と表現している。その両方を回し続けるのがコーチングである。

日本で事業を営む人に一言添えておきたい。日本の絶対スコアは、ほとんどの市場より構造的に低く出る。SurveyMonkeyによるある多国間調査では、日本の平均は調査対象9市場のうち最も低く、ゼロを大きく下回った。その理由については、最高点をつけることへの文化的なためらいから、そもそも何かを薦めることへの姿勢の違いまで、研究者の間でも議論が分かれる。原因が何であれ、欧州の取締役会なら警戒するようなスコアが、日本の顧客が十分に満足している事業を表していることもある。比べるべきは時系列の推移と同じ市場内の同業他社であり、国をまたいだ素のスコアでは決してない。規律は数字よりはるかに重要であり、日本ではそれが二重に当てはまる。

クローズド・ループ

クローズド・ループとは、顧客が何かを伝えてきたとき、誰かが個人として、迅速に応えることを意味する。

批判者に対しては、行動する権限を持つ人が電話やメッセージで連絡することを意味する。理想は本部のサービス窓口ではなく、該当する店舗やチームの責任者だ。目的は、相手を説得してスコアを引き上げることではない。何が起きたのかを理解し、可能な限り正し、顧客の声が一人の人間に届いたことを示すことである。

私が見てきた中で最も強いプログラムは、明確な基準を定めている。問題を実際に解決できる人が、1、2日以内に自ら電話をかけることだ。ポイントは速さそのものではない。誰にとっても記憶が新しいうちに、問題が解決する力を持つ人のもとに届くことである。

関係が何年にもわたって続くラグジュアリーの世界では、うまく対処されたリカバリーが、完璧な取引以上に顧客との関係を強めることがある。サービス研究者はこれを「リカバリー・パラドックス」と呼ぶ。問題を寛大に解決してもらった顧客は、一度も問題を経験しなかった顧客よりもロイヤルティが高くなりうる、というものだ。これが常に成り立つわけではなく、リカバリーのために失敗を計画すべきでもない。それでも、この勘定について重要なことを言い当てている。認め、迅速に修復した引き出しは取り戻すことができ、時には利子までつく。無視した引き出しは、複利で膨らんでいく。

リッツ・カールトンは、この考え方を中心に文化を築いた。広く報じられているところでは、従業員はマネージャーに相談することなく、問題解決のためにゲスト1人、1件あたり最大2,000ドルを使う権限を与えられていることで知られる。重要なのは金額よりもメッセージだ。ゲストの目の前に立つ人が、その場で預け入れを行うことを任されているのである。

クローズド・ループは推奨者に対しても重要だ。感謝を伝え、何を評価してくれたのかを知り、名前が挙がったスタッフを称える。そのすべてが、増やしたい行動を強化する。推奨者はしばしば、尋ねられなくても、ブランドの約束がうまく果たされたときにどう見えるのかを正確に語ってくれる。これは貴重な情報だが、ほとんどの企業は記録したまま忘れてしまう。

ここでの規律は、スピードと当事者意識である。3週間後に、事情を何も知らない人から届く返答は、意図とは正反対のメッセージを顧客に伝えてしまう。

根本原因の是正

クローズド・ループがインナーループだとすれば、根本原因の是正はアウターループである。不満を持つ顧客が一人なら、それはサービスの一場面だ。不満を持つ20人の顧客が同じ問題を口にするなら、それは経営の問題である。

優れた組織は、スコアと同じくらい丁寧に顧客の生のコメントを読む。それをテーマごとに分類し、店舗、市場、商品、プロセスごとにパターンを探し、各テーマを解決する権限を持つ責任者に割り当てる。原因が店舗にあることもある。だが多くの場合はそうではない。物流が守れない配送の約束、顧客を苛立たせる返品ポリシー、最も混み合う時間帯に売場を手薄にする人員配置、時間がかかりすぎるお直しサービス、購入から数カ月後に初めて表面化する品質問題などだ。

多くのプログラムが失敗するのはここである。本部はスコアを店舗の業績指標として扱い、店舗は自分たちが生んだわけでも解決できるわけでもない問題について謝罪を求められる。貸借対照表にたとえるなら、組織が上流で引き出しを続けている分を埋め合わせるために、現場が小さな預け入れを続けるよう求められている状態だ。関わる人々は疲弊し、その差が埋まることは決してない。

実践的な規律として、月に一度の短いレビューがある。そこでは批判者の声の上位五つのテーマを、その責任者、根本原因、修正の期日とともに示す。その場での経営陣の役割は、スコアを説明することではない。障害を取り除くことである。

そして、ほとんどの企業が省いてしまうステップがある。何が変わったのかを顧客とチームに伝えることだ。自分のフィードバックが実際の意思決定につながるのを目にすれば、人は声を寄せ続ける。目に見える変化が何もなければ、調査はノイズとなり、回答率は下がっていく。

取り締まりではなく、コーチングを

NPSプログラムを傷つける最も手っ取り早い方法は、それを武器に変えることだ。スコアが個人のボーナスに厳格に結び付けられたり、主に順位付けや責任追及に使われたりすると、人は体験ではなく数字を管理することを覚える。10点未満はすべて失敗扱いになるのだと説明する販売員に、心当たりのある自動車購入者は多いだろう。調査は満足した顧客にだけ送られ、厳しいフィードバックはいつの間にか消え、体験は変わらないまま数字だけが上がる。これは測定の問題にとどまらない。それ自体が引き出しなのである。顧客は、ブランドが称賛を勝ち取るのではなく、称賛をねだる姿を目にしたのだから。

より健全なのは、NPSをコーチングのツールとして使うことだ。毎日あるいは毎週のチームミーティングで、顧客の実際のコメントを共有する。推奨者が語った具体的な行動を、名前を挙げて称える。批判者のコメントは、罰ではなく学びとして話し合う。優れたサービスが実際にどのようなものかをマネージャーがチームにコーチングできるよう、時間とスキルを与える。やがて会話は「スコアはいくつか」から「顧客は何を伝えていて、私たちはそれにどう対応するのか」へと変わっていく。

どうしてもNPSを報酬と結び付けるなら、チームまたは店舗の単位で、厳しい1週間が全体を左右しないだけの十分に長い期間で行うべきだ。そして、観察された行動の代わりとしてではなく、それと併せて用いるべきである。

チームから始める

これが、私が最も大切にしている部分である。私が率いてきたすべての事業で、顧客体験を何よりも形づくってきたのは従業員体験だった。チームは、どのブランドにとっても最も重要な資産である。ブランド・エクイティが勘定だとすれば、そこで行われるほぼすべての取引を担っているのは売場の人々だ。尊重され、育成され、支えられ、耳を傾けてもらえていると感じているクライアント・アドバイザーは、働きすぎで、声を聞いてもらえず、会社が何を大切にしているのかに確信を持てないアドバイザーとは、まったく異なる瞬間を顧客にもたらす。

このつながりは、直感的なものにとどまらない。1998年にハーバード・ビジネス・レビューに掲載された有名な研究「シアーズにおける従業員・顧客・利益の連鎖」(The Employee-Customer-Profit Chain at Sears)で、同社は、従業員の意識が5単位改善すると顧客の印象が1.3単位改善し、それが売上成長率の0.5%の改善につながったと報告している。正確な数値はシアーズとその時代に固有のものだ。だが、この連鎖そのものは、私が見てきたすべての事業で成り立ってきた。

だからこそ、多くの強い組織はeNPS(従業員NPS)も測定している。質問はこう置き換えられる。「この会社を働く場所として薦める可能性はどのくらいありますか」。顧客のNPSと同様、数字そのものはシグナルにすぎない。重要なのは、それを取り巻く仕組みである。

チームのフィードバック・ループをつくる

同じ三つの規律は、社内にも当てはまる。

社員とのクローズド・ループ。 従業員がフィードバックを寄せたら、リーダーは可能な限り直接応え、何を受け止めたのかを説明すべきだ。答えが「今すぐには変えられない」であっても、その理由を説明することが信頼を築く。沈黙は、必ずダメージを与える唯一の反応である。

根本原因を是正する。 チームが同じ不満を繰り返し挙げるなら、それがシフト、ツール、不明確な優先順位、研修の不足、あるいは本部の店舗への伝え方のいずれであっても、顧客からの苦情と同じ真剣さで扱うべきだ。従業員の悩みと顧客の悩みは、同じ問題を両側から見たものであることが非常に多い。他店にそのサイズの在庫があるかどうかをアドバイザーに示せない在庫システムは、アドバイザーと顧客を同じ瞬間に苛立たせる。

マネージャーをコーチングする。 従業員体験の大部分は、直属の上司によって形づくられる。マネージャーにチームからの定期的で率直なフィードバックを届け、それに基づいて行動できるよう支援することは、企業にとって最もリターンの高い投資の一つである。

最も有益な視点は、顧客と従業員のフィードバックを店舗ごとに並べて見ることで得られる。eNPSの高い店舗では、それが顧客の声にも表れていることが非常に多く、その逆もまた然りだ。顧客スコアと従業員スコアがそろって下がっている店舗が抱えているのは、顧客の問題であることはまれだ。それはリーダーシップの問題であり、コーチングはそこから始めるべきである。

うまく機能すると何が起きるか

NPSが仕組みとして機能していると、それは組織の中で肌で感じられる。店長は指示されなくても批判者に電話をかける。本部は、店舗に謝罪させる代わりに、苦情を生み続けるプロセスを直す。チームミーティングは、昨日顧客が何を言ったかから始まる。従業員は、問題を提起すれば何かにつながると信じている。スコアはたいてい改善するが、その頃には、それは最も面白みのない部分になっている。

本当に変わったのは、組織が自らのブランド・エクイティの取引をそれが起きているその場で把握し、複利で膨らむ前に手を打てるようになったことである。

私があらゆる経営陣に投げかけたい問いはこうだ。もし明日NPSの報告をやめたとしたら、事業の運営の仕方で何か変わることはあるだろうか。答えが「いいえ」なら、あなたが持っているのは単なる数字にすぎない。チャンスは、仕組みを築くことにある。

出典

「視点」は署名入りの論考です。見解は筆者個人のものです。