イオン、岩手に新拠点を開設 東北の物流を二拠点体制に
イオンが東北で唯一だった物流拠点を二拠点体制に切り替える。非常用発電設備を備えた岩手の新拠点は、店舗への配送距離を半分以下に縮めた。増強ではなく「多重化」こそが、次の有事にスーパーの棚を守る鍵だという判断だ。

イオン株式会社は、災害や設備障害などの有事でも店舗への商品供給を止めない体制をつくるため、岩手県胆沢郡金ケ崎町に新たな食品物流拠点を開設すると発表した。「イオン岩手FDC」は、ケース単位の入出荷・在庫機能を担う拠点(FDC = Front Distribution Center)で、プロロジスパーク北上金ケ崎内に立地し、賃借面積は38,822.83平方メートル(11,744坪)。
これまで東北全域をカバーする拠点は、宮城県黒川郡大和町の「イオン東北RDC」1カ所のみだった。新設する岩手拠点はその在庫機能の一部を引き受け、東北の拠点を1カ所から2カ所に増やす。イオンによれば、一方が機能停止しても供給を維持できるバックアップ体制を築くねらいだという。低温エリア(1階)は2026年10月7日に稼働を始め、常温エリア(1〜2階)は2027年2月23日に稼働する予定。
新拠点には非常用発電設備を設置し、燃料3万リットルを地中埋設タンクに備蓄する。停電時でも冷蔵・常温設備をおよそ72時間稼働できる計算だという。設備面ではこのほか、パレット自動倉庫やパレットAGV(自動搬送機)、デパレアームロボット、ケース仕分けソーターも導入する。
物流拠点・機能の再配置により、センターから岩手県内の店舗までの配送距離は58%削減されたといい、あわせて進める物流のDX化で在庫型商品の出荷生産性は40%向上したとしている。
有事への備えという打ち出し方自体は的外れではない。東北の小売業者にとって2011年の記憶は、あらゆる事業継続計画の出発点であり続けている。ただし、イオンが挙げる数字を見る限り、これは保険というより効率化の話でもある。東北で唯一だった拠点を二つに分けることは、配送距離の短縮と冗長性の確保を同時に達成できるため、あらためて別の投資根拠を示す必要がなかったのだろう。東北の店舗にとっては、来年2月にかけての稼働スケジュールこそが直近の注目点だ。常温エリアが実際に稼働するまで、店頭の安定供給力は変わらない。