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分析

百貨店の宝飾・貴金属売上は2割増 その大半は金価格の上昇で説明がつく

日本百貨店協会によると、全国百貨店の美術・宝飾・貴金属の売上高は2026年に入って毎月16〜22%増と、館内で最も伸びている売り場だ。ただし円建てで3割超上昇した金価格と、購買客数が伸びないまま膨らんだ免税の客単価に照らせば、その伸びの大半は買い手の増加ではなく価格の上昇である。

百貨店の宝飾売り場を、シルエットの客二人の背後から見たイラスト。低い照明の下でガラスのショーケースが光り、販売員が指輪のトレーを持ち上げている。
イラスト:floortok.com

日本百貨店協会が8月25日に公表した7月の全国百貨店売上高概況(floortokは公表当日に報じた)によると、美術・宝飾・貴金属の売上高は575億円で、店舗数調整後の前年同月比は16.7%増だった。この品目の伸びは1月17.7%、2月18.0%、3月20.8%、4月19.6%、5月19.6%、6月22.3%、7月16.7%と、7カ月連続で16%を超えている。同協会の表で並ぶ品目は他にない。7月の衣料品は3.9%増、食料品は0.2%増、商品券は7.2%減だった。

この品目の重みは、7月売上に占める11.8%という構成比以上に大きい。伸びの多くがここに集中しているからだ。同協会の集計では7月の百貨店売上高は5.1%増の4889億円だったが、協会の数字から当編集部が計算すると、館全体の前年比増加額のおよそ4割が宝飾・時計・貴金属からきている。前年7月の構成比は10.6%だった。誰が買っているかは協会自身の解説にある。7月は高額時計が希少性や資産価値への評価を背景に外商顧客や富裕層を中心に好調とし、6月は株高を背景とした国内富裕層の旺盛な購買意欲と、円安による訪日客需要を挙げている。

動いたのは主に金属の価格

これを新しい客層の波と読む前に、売り場に並ぶ商品の原価を見ておきたい。世界銀行の月次平均で金価格は7月に1オンス4,073ドルと前年同月比21.9%高、8月は4,411ドルと31.0%高だった。円建てではさらに大きい。同じ時期に円が下落したためで、米連邦準備制度理事会の月中平均レート1ドル162.33円で換算すると、7月の金1オンスは約66万1000円と前年比34.5%高、8月は約70万1000円と41%高になる。銀はドル建てで7月に56%高、プラチナは17%高だった。円建て金価格の上昇率は年初にはもっと高く、1月は76%、4月は62%だった。百貨店の当該品目が18〜20%増を記録していた時期である。

協会の美術・宝飾・貴金属には、完成品の宝飾品や時計に加え、貴金属売り場で扱う地金や金貨が含まれる。したがって一部は毎月の相場でそのまま値が動き、残りも各メゾンの価格改定で動く。円建てで3割から7割上がった金属に対し、売上が2割増というのは、数量が横ばいか減っていても成り立つ数字だ。協会が公表する免税売り場の客単価も同じ方向を示す。7月は免税購買客の客単価が前年を約2割上回ったと報告し、6月は免税購買客数が0.5%減だったとしている。5月には客単価の上昇の背景として、円安基調と高額品の価格上昇を挙げている。当編集部の推測ではなく協会自身の説明である。

貿易統計も供給側から同じことを語る。スイスからの時計輸入額は7月に452億円と前年同月比24.5%増で、3月にはfloortokが追う貿易統計の系列で最高となる557億円に達した。ただし7月のスイスフランは200.31円と前年同月の184円から上昇しており、各社が請求書を切る通貨で見れば伸びは14%程度にとどまる。貴金属製の身辺用細貨類(宝飾品)の輸入額は1〜7月累計で3847億円と前年同期比15%増だが、月ごとに数百億円単位で振れる系列だ。floortokが追う金額ベースの系列は数量と価格を分けていない。それがこの議論の正直な限界であり、言えるのは、入ってくる商品の金額、売れる商品の金額、そしてその原材料の価格がいずれも上がっており、最後の一つが最も速く上がっているということだ。

館が差し出しているもの

インフレという読み方が館の残りの売り場にとって重要なのはここからだ。宝飾売り場の伸びが主に価格によるものなら、それを払う客は必ずしも増えても活発になってもいない。同じ物により多く払っているだけで、国内客の場合、その分は2割増えたわけではない家計から出ている。協会の7月の表の残りは、その帳簿の反対側のように読める。食料品0.2%増、食堂・喫茶0.8%増、家具0.2%増、その他雑貨1.1%減、商品券7.2%減。最も高額な売り場の構成比は1年で1ポイント以上上がり、日常の来店を生む売り場の構成比は下がった。この構成なら、客足が動かなくても館全体で5%増を計上できる。協会が7月に100店に聞いた入店客数の傾向は、増加52店、減少29店、変化なし19店だった。

メゾンにとって、ここで効いているレバーは人(People)ではなく商品(Product)と価格だ。売り場は同じ外商顧客と、円が割安になった訪日客に、より少なく、より高い物を売っている。百貨店にとっての問いは、集客を担うフロアが見返りに何を得るかだ。大半が金属価格による宝飾の好況は、デパ地下を埋めてはくれない。答えは二つの日付が出す。9月25日公表の協会8月概況は、すでに上がっていた前年の水準に対してこの品目が16%超を保ったかを示し、10月初めに世界銀行が公表する9月の金平均価格は、そのうちどれだけが再び金属だったかを教えてくれる。金が横ばいでも売り場が伸び続けるなら新しい買い手がいる。両方が一緒に減速するなら、初めからいなかったことになる。

宝飾売り場の伸びは、扱う金属の値上がりの半分

前年同月比(%)

0%40%80%1月2月3月4月5月6月7月+75.6%+77.4%+73.3%+62.0%+51.3%+40.3%+34.5%+17.7%+18.0%+20.8%+19.6%+19.6%+22.3%+16.7%円建て金価格宝飾・貴金属
日本百貨店協会、世界銀行 Commodity Price Data、米連邦準備制度理事会 H.10 · 作図:floortok