稲とアガベ、大丸東京店の催事フロアに15,000円・1,000本限定の新酒「ASIAN WISDOM」を投入
秋田発のクラフトサケ醸造会社が、大丸東京店1階の催事スペースで2週間限定のポップアップストアを開き、5カ国・地域の素材をブレンドした税抜15,000円・1,000本限定の新酒「ASIAN WISDOM」を発売する。路面店ではなく百貨店の催事場を選んだことに、希少性を軸にした高額層へのアプローチが表れている。

秋田県男鹿市に拠点を置くクラフトサケ醸造会社、稲とアガベは9月16日から29日まで、大丸東京店1階のSVPイベントスペースでポップアップストアを開催すると発表した。丸の内の同フロアを会場として、新作の高級クラフトサケと、7種類のコラボレーション商品を展開する。
目玉となるのが新商品「ASIAN WISDOM」で、720ml・税抜15,000円で、1,000本限定で発売される。同社によると、アジア5カ国・地域の素材をそれぞれ一つずつブレンドしたのが特徴で、日本産の唐花草(ホップの仲間とされるつる性植物)、韓国産の朝鮮五味子、中国産の桂花茶、台湾産の紅玉紅茶、インドネシア・マルク諸島産のクローブを使用するという。「One Asia in a Bottle」を掲げ、ラベルデザインはインドネシアのデザインチームSatuCollectiveが手がけた。西洋的な見方によらず、自分たちの言葉で「アジアらしさ」を定義しようとする狙いだと同社は説明している。
同時に展開するコラボレーション商品「花風」は全7種。アーティストとのコラボレーション3種が各3,300円、地元・男鹿の飲食店とのコラボレーション4種が各2,750円で、いずれも720mlだという。
「この企画を成功させられるかどうかで、クラフトサケの未来が変わる」。稲とアガベ代表取締役の岡住修兵氏は発表資料でこう述べた。
稲とアガベは2021年3月の設立で、資本金は942万円。国内向け・輸出向けの酒造りのほか、飲食店運営や食品加工、宿泊業も手がける。同社によると、輸出額のみで見れば2024年から2027年(見込み)にかけて50倍の成長を見込んでおり、2026年8月には男鹿の酒造りを軸とした地域活性化の取組みが、政府の「地域未来戦略」の枠組みで東北初の認定を受けたと明らかにしている。
価格以上に目を引くのが、出店先の選び方だ。設立間もない醸造会社が単独店舗や居酒屋との提携に頼らず、東京駅直上の百貨店の催事フロアで、2週間分の密度の高い来店客を買った形だ。店舗賃貸のリスクを負わずに富裕層・目利き層にリーチし、希少性の高い商品の需要を見極めるという、地方のクラフト系事業者にとって定番の手法だ。大丸を運営するJ.フロント リテイリングにとっても、地方・クラフト系のブランドが入れ替わり立ち替わり出店する催事フロアは、通勤客や贈答需要、訪日客などすでに来店動機を持つ層に「新しさ」を提供し続ける仕掛けであり、店舗側のリスクはほとんどない。
商品設計自体も、floortokが今年追ってきた日本のクラフト飲料の潮流と重なる。純日本的な物語ではなく、汎アジア的な物語をまとったプレミアム化が進んでおり、国内消費者だけでなく訪日客や近隣アジア圏の嗜好も意識した設計だ。税抜15,000円・1,000本限定という設定は、量ではなく希少性そのものを打ち出すメッセージであり、本当の試金石は2週間の催事での実売が継続的な取引につながるかどうかだろう。