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分析

訪日の潮目で分かれた日本の百貨店決算

日本の主要百貨店グループの決算が数週間のうちに出そろい、明暗が分かれた。その分岐点はインバウンド需要——そのタイミングと、消費を担う顔ぶれの変化にある。

日本の主要百貨店グループの決算がこの夏、数週間のうちに出そろった。そして珍しく、各社の明暗が分かれた。髙島屋の純利益は58%増、一方でエイチ・ツー・オー リテイリングは14%減。三越伊勢丹は44%増だが、J.フロント リテイリングは減益。この差の背景には、いまや売り場を左右する一つの変数がある——インバウンド消費と、各社の決算がそれをいつの時点で捉えたか、である。

同じ潮目、捉えた瞬間はそれぞれ

イラスト:買い物袋を持つ人々が、エスカレーターの交差する日本の百貨店の吹き抜けを行き交う様子
イラスト:floortok.com

手がかりは決算期の暦にある。髙島屋とJ.フロントは2月決算のため、直近の数字はすでにこの春——2026年3〜5月——を含む。円安が訪日客を売り場に呼び戻していた時期だ。髙島屋の国内百貨店事業の営業利益は、この四半期に44%増えた。一方、3月決算の三越伊勢丹とH2Oが直近で開示したのは2026年3月に終わる通期であり、その数字には中国人客が細った2025年終盤の弱含みがなお残る。H2Oの百貨店はインバウンド売上が約2割減少し、三越伊勢丹も11月以降の中国人客の一服で、海外・インバウンド売上が過去最高から反落したと説明した。

タイミングを取り除いても、同じ力が底流に見える。三越伊勢丹はそれでも増益だった——東京店の得意客による過去最高の消費とコスト改革が、インバウンドの落ち込みを補って余りある。H2Oは中国人客の減少と、旗艦・阪急うめだ本店の改装による売場縮小の双方に足を引っ張られた。J.フロントの四半期利益は減ったが、これは前年の固定資産売却益の反動であり、本業を示す事業利益はむしろ増加、外商・免税売上も伸びた。共通するのは国内需要の弱さではない。各売り場が外国人の財布にどれだけ晒されているか、そしてその財布を誰が握っているか、である。

百貨店事業の営業利益(直近の報告期間、前年同期比)

前年同期比(%)

+44.2%髙島屋+1.5%三越伊勢丹−6.0%J.フロント−15.8%H2O(阪急阪神)
各社決算短信。髙島屋・J.フロントは第1四半期(2026年3〜5月)、三越伊勢丹・H2Oは2026年3月期通期。 · 作図:floortok

いま問われるのは、潮の大きさより顔ぶれ

かつてインバウンドは、あらゆる百貨店の売り場を持ち上げる上げ潮だった。もはやそうではない。floortokが報じてきたように、円は下落を続ける一方で訪日客数は頭打ちとなり、その客数を支える国籍構成も様変わりした。2026年初めには中国の消費額が半減する一方、台湾などが過去最高を更新している。H2Oの関西各店のように中国人需要への依存が大きい売り場は反落を最も強く受け、髙島屋のようにより幅広く単価の高い客層と春の回復を捉えた売り場が先行した。今期の両者の差は、その多くがインバウンドへの依存度とタイミングの差なのだ。

本当の試金石は8月に訪れる。三越伊勢丹とH2Oが自らの春の四半期を開示するときだ。髙島屋を押し上げたインバウンドの回復が両社の数字にも表れれば、今期の明暗はタイミングの綾ということになる。表れなければ、それは分岐の始まり——新しい客層を取り込む売り場と、旧来の客層の復活をなお待つ売り場との——に見えてくるだろう。