ルイ・ヴィトン初の外部企業との共同ブランド製品はポルシェ911 シンガーと組み特別仕立ての2台を発表
ルイ・ヴィトンとポルシェ再生工房シンガー・ビークル・デザインが「Art of Travel」をテーマに特別仕立ての911を2台発表した。外部企業との共同ブランド製品としては同社史上初の試みで、日本ではシンガーの公式パートナーであるコーンズ・モータースが発表した。価格や販売方法はまだ明らかにされていない。

ルイ・ヴィトンが、外部企業との共同ブランド製品としては史上初となるプロジェクトを発表した。ポルシェ911の再生・改造で知られる米カリフォルニアの工房シンガー・ビークル・デザインと組み、「Art of Travel(旅の真髄)」という共通テーマのもと、特別仕立ての2台を製作した。8月13日に両社共同で発表され、日本ではシンガーの公式パートナーであるコーンズ・モータースがこれを明らかにした。
両社によると、プロジェクトの発端はより小さな依頼だった。シンガー側がルイ・ヴィトンにダッシュボードクロックのデザインを依頼したことから始まったという。同社はスイスの時計工房「ラ・ファブリック・デュ・タン ルイ・ヴィトン」で、腕時計「タンブール」のケース形状を模した着脱式クロックを製作した。文字盤には時刻表示の代わりに「LOUIS VUITTON」の文字を12回刻み、取り外して卓上時計としても使える仕様になっている。ここから発展し、スピードメーターやタコメーターを含むメーター盤全体をタンブールの意匠に合わせて刷新する取り組みへと広がった。作業には約1年を要したといい、ルイ・ヴィトンのウォッチ部門ディレクター、ジャン・アルノー氏とシンガーのプロジェクト統括デザイナー、オクターヴ・シャニー氏は、いずれも両社にとって前例のない試みだったと説明している。
1台目の「クラシック」は、サフラン、コバルトブルー、イエローをまとったボディカラーに、トランクやサーフボード、スキーを積載できるルーフラックを備える。ルイ・ヴィトンによると、サフランは同社アーカイブで150年以上、パッケージでは20年以上使われてきた色であり、自社が所蔵する1924年のシトロエン製トラベルトランクや、シンガーの「バハマ・イエロー」にも通じるという。車内はルイ・ヴィトン独自の「VVTレザー」で仕立て、ドアハンドルの縁は同社バッグと同じエッジ染色仕上げ、シートとフロントトランク内装にはトランク内装に見られる菱形キルティング柄「マルトラージュ」を施し、モノグラム・フラワーをあしらった通気孔は一つひとつ手仕上げとした。ダイヤルやスイッチ、通気口はロジウムメッキとし、時計づくりの技術で仕上げられている。
2台目の「クラシック・ターボ」は、ルイ・ヴィトンのウィメンズ アーティスティック・ディレクターを務めるニコラ・ジェスキエール氏がデザインを手がけたカブリオレで、3.8リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載する。ジェスキエール氏は、太陽の光と海を感じられる開放的な一台を目指したと述べている。ボディカラーは「カルケール・リュテシアン」と呼ばれる白で、パリの石灰岩や同社の歴史的本拠地ポン・ヌフ本店を想起させる色合いだといい、木材とレザー、ゴールドのアクセントで仕上げられている。車内では、レザー張りのコンソール中央にダッシュボードクロックを配置し、シフトレバー周りにはバッグ「ノエ」のシルエットを想起させるレザーの引き紐を採用した。リアエンジンカバーとトランクは、クラシックモーターボートのデッキに用いる技法を取り入れたニス仕上げの木材でパネリングし、フロントトランクには特別仕立ての3点セットのラゲージを収納する。
両社とも価格や販売方法については明らかにしていない。コーンズ・モータース(社長:林誠吾氏、東京都港区)は、日本におけるシンガーの公式パートナーとして、顧客対応や広報対応、購入サポート、メンテナンス・整備を担うとしている。実際にこの車を入手し維持していくうえでの、日本国内における具体的な窓口という位置づけだ。
ルイ・ヴィトンはこれまでもアーティストや建築家、他のデザイナーとのコラボレーションを重ねてきたが、自社が所有しない外部企業と組み、共同ブランドの製品として自らの名前を冠したのは、両社の説明によれば今回が初めてだという。その初めての相手が鞄でも時計でもなく自動車だったという事実は、同社が現在ブランドをどの方向に伸ばせると考えているかを示している。大量に売る新製品ラインではなく、旅と職人技という自社の価値観に隣接する領域への広がりだ。コーンズと、ポルシェの愛好家とルイ・ヴィトンの顧客層が重なる日本市場にとって、より具体的な意味はもっと単純だろう。価格はまだ明らかになっていないが、この特別な一台を手に入れるための国内の窓口が、今できたということだ。