髙島屋、AIで図案師不足を補い新柄「江戸小紋」を共創
来月発売される新柄「江戸小紋」2柄は、単なる伝統工芸の販促にとどまらない。AIが百貨店の着物サプライチェーンの人材不足を補えるかを試す実験でもある。

髙島屋は10月7日、新柄の「江戸小紋」テキスタイル2柄を、都内5店舗とジェイアール名古屋タカシマヤで発売すると発表した。文教学院大学と約1年をかけて進めたプロジェクトの成果で、AIによるデザイン支援と熟練職人の技を組み合わせた。新柄は「オーケストラ」と「葡萄と栗鼠」で、江戸小紋の型染めに欠かせない型紙図案をつくる「図案師」の不足を補う狙いで開発された。
髙島屋によると、AIは過去の江戸小紋作品を分析し、伝統的な美意識に沿った柄の配置案を提示する。その後、熟練職人が案を確認・調整して仕上げ、伝統的な手彫り(きり彫り)と型染めの工程へと進む。同社はプロジェクトの狙いについて「AIが職人に代わるのではなく、AIが職人不足を補うもの」としている。
この位置づけこそが重要だ。百貨店によるAIと職人技のコラボは、これまでキャンペーンで終わるものが少なくなかった。しかし今回は、生産のボトルネックそのものに手を付けている。着物市場の縮小と職人の高齢化により、図案師という職種はほぼ代替が利かなくなりつつある。AI支援によるデザインが、髙島屋の凝った意匠の新柄企画を持続可能なペースで続けられるようにするのであれば、それは限定商品の販促よりも息の長い対策だと言える。着物フロアが依存しているのは需要ではなく供給だからだ。
この取り組みの真価は、次の1年以内に同じ枠組みで第3弾の柄を発表できるかどうかで測られる。それは、最初の2柄がどれだけ売れるかよりも雄弁に、このモデルの持続可能性を物語るはずだ。