トライアルHD、西友完全子会社化で売上高1兆3471億円のグループに 純利益は7割減
トライアルホールディングスは西友の完全子会社化により売上高1兆3471億円のグループへと姿を変えたが、買収に伴う資金調達コストと会計処理が今期純利益を7割押し下げた。来期にはその挽回を見込む計画だ。

トライアルホールディングスが、かつて米ウォルマート傘下にあった西友を完全子会社として初めて連結決算に取り込んだ。2026年6月期の決算は、この買収の規模の大きさと、それに伴うコストの両方を映し出す内容となった。
8月13日に開示された2026年6月期(2025年7月〜2026年6月)の決算によれば、トライアルは2025年7月1日付で西友の全株式を現金4096億5000万円で取得し、完全子会社化した。グループ売上高は前期比67.6%増の1兆3471億円となり、期末の店舗数はトライアル業態378店舗、西友業態243店舗(食品中心のスーパーマーケット業態と、より大型のハイパーマーケット業態を含む)の合計621店舗になったという。
営業利益は同43.9%増の303億7100万円だったが、増益は損益計算書の下段までは続かなかった。親会社株主に帰属する当期純利益は前期の117億5200万円から7割減の35億2200万円にとどまったと同社は説明する。
この落差は、小売事業そのものではなく、買収の資金調達と会計処理に直接ひもづく費用に起因する。トライアルは「借入関連費用」として67億4500万円を計上し、支払利息も前期の7000万円から42億7000万円へと急増した。買収資金として調達した短期借入金が265億円から3674億円へ膨らんだためだ。さらに、買収で発生したのれん3065億5100万円のうち153億3100万円を償却した結果、営業利益が増えたにもかかわらず経常利益は9.1%減少した。
税負担がこれに追い打ちをかけた。税引前当期純利益182億6600万円に対し、法人税等の合計額は141億4200万円。実効税率はおよそ77%に達し、前期の約38%から大きく上昇した。今回のような株式取得で生じたのれんは、一般に日本の税制上損金算入が認められないため、営業利益をすでに押し下げているのれん償却額153億3100万円が、あたかも実際のキャッシュ収入であるかのように再び課税されているとみられる。これは、取得したのれんを一定期間で規則的に償却することを求める日本基準特有の会計処理(トライアルは20年均等償却を選択)によるもので、減損のみを問う米国基準や国際会計基準(IFRS)とは異なる仕組みである。
一方、本業である小売事業は見出しの数字とおおむね同じペースで伸びている。流通小売事業の売上高は同67.9%増の1兆3424億8000万円、セグメント利益は同47.0%増の348億7500万円だったという。決済機能付きレジカート「Skip Cart」を展開するリテールAI事業は、売上高こそ6.8%減ったものの、セグメント利益は10倍以上の6億5700万円に伸びた。同カートはグループ外を含め288店舗、2万4031台の導入台数に達したという。
トライアルは両チェーンを別々に運営するのではなく、融合を進め始めている。西友の店舗を業態転換した新フォーマット「トライアル西友」を期中に3店舗開業し、首都圏で老朽化した都市型総合スーパー(GMS)の再生を狙う。また、トライアル自慢の惣菜を西友店舗にも展開する一方、「みなさまのお墨付き」と銘打つ西友のプライベートブランド商品をトライアルの店頭にも並べ始めたという。
今回の買収で得たものは、成長性そのものより地理的な布陣だと言えそうだ。トライアルは九州を自社の基盤と位置づけており、西友の完全子会社化そのものを、人口集積地である関東・中部・関西エリアでの事業基盤を確立する手段として説明している。首都圏に西友が持つ駅近の密な店舗網こそ、その明白な足がかりだ。プライベートブランドの相互展開や惣菜強化は、新たに得たこの店舗網を新体制の下でどう収益化するかという手段であり、買収そのものの目的ではないだろう。
トライアルは急ピッチの回復を見込む。2027年6月期(2026年7月〜2027年6月)の業績予想は、売上高1兆4582億円(前期比8.2%増)、営業利益390億円(同28.4%増)、純利益107億円(同203.8%増、ほぼ3倍)としており、統合コストが平準化し、同社が見込む「シナジー」が数字に現れ始めることを想定しているという。年間配当は今期すでに16円から17円に引き上げられており、来期で17円を維持する計画だ。今期の配当性向は、純利益の縮小を受けて、59.1%まで跳ね上がった。
決算発表には、期末後に発生した新たな懸念材料も記載されている。後発事象の注記によれば、2026年7月28日に発生した地震により、九州の店舗設備や倉庫が被害を受け、電力・ガスの供給停止や原材料等の供給遅延が生じた。8月13日の開示時点で一部の店舗・施設が営業を停止しており、被害額や2027年6月期業績への影響は現時点で合理的に見積もることが困難だとしている。
西友の店舗網を、単に「規模が大きい」だけでなく「収益力の高い」事業へと転換できるか。純利益がほぼ3倍になると見込む来期決算が出るまでの1年間、注目すべき数字はそこにある。
前年比増減率(%)