ANAホールディングス、訪日需要で国際線が伸長——燃油と円安が利益を打ち消す
ANAホールディングスの中間決算では、訪日需要を背景に国際線旅客収入が21.2%増と好調だった一方、円安と燃油高が利益を圧迫した。商社部門はAKOMEYA TOKYOの完全子会社化を決め、日本のリテール事業への布石を打った。

ANAホールディングスは10月29日、東京証券取引所に提出した決算短信で、2026年4月から9月までの中間期における連結売上高が前年同期比17.5%増の1兆3,987億円になったと発表した。営業利益は9.7%減の881億円、親会社株主に帰属する中間純利益は11.8%減の670億円にとどまり、同社は燃油費の増加が売上の伸びを上回ったことを理由に挙げた。
増収の主役は国際線だ。ANAブランドの国際線旅客収入は前年同期比21.2%増の4,920億円となり、同社が「旺盛な訪日需要」と呼ぶ需要が、4月の成田=バンコク線増便や9月の成田=シンガポール線増便などの座席を埋めた。国際線の旅客数は8.7%増と、収入の伸びの半分以下にとどまっており、単価の上昇もうかがえる。対照的に国内線旅客収入はわずか1.0%増の3,703億円で、旅客数もほぼ横ばいの2,257万人だった。5月の運賃体系刷新やレジャー向けの割引販売があったものの、台風や7月の熊本地震後の運航変更の影響が相殺した。
燃油と円安が利益を圧迫
収入の伸びが最終利益に届かなかった理由は、ANA自身の開示に表れている。航空事業の営業利益は、売上高が19.2%増えたにもかかわらず15.8%減少し、燃油費の増加に食われた。通期予想の修正では、売上高を1,000億円上積みして2兆8,700億円とし、純利益も3.1%引き上げて990億円としたが、営業利益の予想は1,500億円で据え置いた。背景にあるのは前提条件の見直しだ。想定レートは1ドル=155円から160円に、ドバイ原油は1バレル75ドルから90ドルに、シンガポール・ケロシンは90ドルから150ドルへと、いずれも大幅に引き上げられている。floortokのマーケットデータルームによれば、円は9月時点で前年同月比5.8%下落し1ドル=156.42円となっており(米連邦準備制度理事会データ)、ANAが説明するコスト圧力のかなりの部分は座席が売れなかったことではなく、為替そのものにある。
ANAが運ぶ訪日客の構成も足元で変化している。JNTOの速報値によれば、9月の中国からの訪日客数は前年同月比44.5%減となった一方、韓国からは25.6%増、台湾からは13%増と、市場ごとの差が広がっている。ANAが言う「旺盛な訪日需要」は、もはや均等に分布してはいない。
商社部門が日本の小売に踏み込む
決算全体の中では小さいが、注目すべき分野が商社事業だ。免税店「ANA DUTY FREE SHOP」や空港物販店「ANA FESTA」が旅客需要の回復で好調だったことなどから、商社事業の売上高は3.3%増の753億円となった。一方で営業利益は18.9%減少した。前年同期は大阪・関西万博にともなう観光土産品卸売「FUJISEY」の取扱高が押し上げ要因となっていた反動と、人件費の増加が主な理由だ。
その商社事業を担う全日空商事(ANA Trading)は9月、食品・雑貨専門店を展開するAKOMEYA TOKYOを完全子会社化することを決定したと発表した。空港での販売網やノウハウと、AKOMEYA TOKYOが持つ独自のブランド力やマーケティング力を組み合わせ、リテール事業をさらに成長させる狙いだとしている。取得額は開示されていない。
二つの動きは、必ずしも整合的ではない。空港の店舗は国・地域ごとに偏りのある訪日需要の回復に乗っているのに対し、新たに取り込むブランドの強みは空港の外、街中や百貨店の棚にある。両者がどう組み合わされるか、そして通期予想にすでに織り込まれた燃油・為替リスクが和らぐかどうかが、下期の見どころになる。
前年同期比(%)