帝国ホテル 京都の本館、名称を改め登録有形文化財の指定を継続
帝国ホテルは、祇園で本館として保存・活用した建物が「旧八坂会館」として国の登録有形文化財の指定を継続したと発表した。構造躯体を残し、元のタイルの1割超を手作業で回収・再利用した保存プロジェクトの成果だ。

帝国ホテルは、京都の同社ホテルの本館が国の登録有形文化財としての指定を継続すると発表した。文化審議会が7月9日付で新名称「旧八坂会館」への登録変更を決定したことによるもので、同社は8月12日付の発表でこれを明らかにした。
同社によると、建物は1936年、大林組の木村徳三郎氏の設計により「八坂会館」として建設された。祇園甲部歌舞練場に隣接する集会施設として計画されたもので、2001年に登録有形文化財に登録されたほか、2011年には京都市の歴史的景観建造物にも指定されている。人形浄瑠璃をはじめとする興行の場として使われた後、映画館やダンスホール、コンサートホールとして活用されてきたが、老朽化と耐震性への懸念から、建設当初の目的だった劇場機能を含め、大部分が使われなくなっていたという。
帝国ホテルは解体ではなく、建物の一部を保存・活用する道を選び、その本館を舞台に今年3月5日、祇園甲部歌舞練場の敷地内に「帝国ホテル 京都」を開業した。同社の説明では、登録有形文化財は建築面積または通常見える範囲の外観の4分の1を超える改変を行う場合、原則として届出が必要とされる。今回のプロジェクトでは保存範囲そのものは縮小したものの、外壁2面と構造躯体の一部、さらに元の外壁タイルやテラコッタ、屋根の意匠を保持したとしている。
特に重視されたのは、周辺の街並みからもっとも視認性の高い南西側の正面外観だ。帝国ホテルによると、建設当初に使われていたタイルのうち10.6%にあたる1万6,387枚を、歴史的建材を傷めずに取り外す伝統技法「生け捕り」により回収し、修復後の外壁に再利用したという。外壁を彩るテラコッタの装飾(宝相華文様)は一点ずつ修復した上で構造用アンカーピンで固定し、銅板葺きの屋根や金物装飾も元の形状・寸法どおりに再現、軒先丸瓦に刻まれた「歌」の文字も復元され。エントランスホールでは、天井や壁面の一部が保存・再利用されたほか、梅の意匠を施したエッチングガラスも元の位置に復元されている。
この区分けは意味を持つ。日本の「保存活用」の多くは、いわゆるファサード保存にとどまる。新築の建物の前面に薄い元の外壁だけを貼り付け、景観規制さえ満たせばよしとするケースが少なくない。今回のように構造躯体を残し、生け捕りによって全体の1割超のタイルを実際に再利用するのは、それよりも手間とコストのかかる選択であり、通常の商業再開発よりもラグジュアリーホテル事業者の方が引き受けやすい種類の投資でもある。登録の名称自体が「旧八坂会館」であり「帝国ホテル 京都」ではない点も示唆的だ。文化財としての価値は、誰が運営するかではなく、何が残されたかによって認められているということになる。同社は開業に先立ち2025年4月にラグジュアリーホテル連合「リーディング・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド」にも加盟しているが、地域における立ち位置という点では、事業者が変わっても存続する行政プロセスに紐づくこの文化財登録の方が、より重みを持つと言えるだろう。