おたからや、オーチャード・ロードに時計販売専門店を開設——シンガポール戦略が「買取」から「販売」へ転換
いーふらんが運営するおたからやが、シンガポール進出から約1年で売上ほぼ倍増を達成し、Far East Plazaに初の販売専門店を構えた。

横浜市に本社を置く株式会社いーふらんは、2026年7月14日、オーチャード・ロードのFar East Plaza 3階に高級腕時計の販売専門店「OTAKARAYA JAPAN Orchard Far East Plaza (Selling shop)」を開業した。同社によれば、シンガポール市場ではこれまで買取を主軸に現地基盤を築いており、今回の開店は「買う」から「売る」への戦略的な転換点となる。
Far East Plazaは、シンガポールの富裕層コレクターや海外からの来訪者が集まる中古時計・ブランド品流通の拠点として知られる。同施設内外にすでに既存店舗を持つ同社が販売専門店を追加した背景には、明確なサプライチェーン戦略がある。日本国内のおたからやネットワークで真贋査定とメンテナンスを経た時計を、中間業者を介さずに直接販売できる体制を現地に築くことが狙いだ。
この出店を支える成長速度も見逃せない。同社によれば、シンガポール事業は進出からわずか1年で売上高が約2倍に達した。その要因として、日本式の接客品質と、英語・中国語・日本語の3言語に対応できる多国籍スタッフによる現地密着型のコミュニケーションを挙げている。オーチャード・ロードを訪れる多様な客層を意識した体制といえる。
同社が掲げる中期目標は、買取店と販売店を合わせてシンガポール国内に30店舗を展開することだ。日本国内での新卒・キャリア採用に加え、現地採用も強化しており、海外駐在のハードルを低く設定している点が人材戦略の特徴である。現地責任者が入社2年目で就任した事実は、同社の実力主義的な昇進文化を象徴する事例として紹介されている。
今後の注目点
焦点は拡大速度と品質維持の両立だ。成長の原動力とされる「日本式接客」を複数店舗にわたって再現できるかどうかは、マネジメントの厚みと日本からの供給網の安定性にかかっている。また、中古時計の競合が成熟したシンガポール市場で、日本基準の品質プレミアムがどこまで価格優位に転換できるかも問われる。30店舗という数値目標は、今後の進捗を測る明確な尺度となるだろう。