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星野リゾート、明治の監獄を全48室のラグジュアリーホテルへ——「星のや奈良監獄」開業

星野リゾートは2026年6月25日、1908年築の旧奈良監獄——国指定重要文化財——を改修した「星のや奈良監獄」を開業した。かつての獄舎を全48室のスイートに造り替え、文化財の保存を助成金ではなく観光収入で支えるという賭けに出た。

白レンガの列柱とアーチ窓が連なり、中央にドーム状の塔を配した建物を静かな対角線で描いたイラスト。改装された明治期の監獄建築で、小さな真鍮色の円が唯一の温かみのアクセント。
国の重要文化財、1908年築の旧奈良監獄——ホテルとして生まれ変わる。 · イラスト:floortok.com

星野リゾートは2026年6月25日、自社のニュースルームによると、1908年に完成、2017年に国の重要文化財に指定された旧奈良監獄を改修した「星のや奈良監獄」を開業した。設計を手がけたのは建築家の山下啓次郎氏で、中央の看守所から獄舎が放射状に伸びる「ハビランド式」と呼ばれる構造を採用している。星野リゾートによれば、山下氏が明治期に手がけた5つの監獄のうちの一つであり、現存する中で唯一、完全な形を保っているのがこの奈良監獄だという。成人向けの監獄としての役割を終えた後は、1946年から70年以上にわたり奈良少年刑務所として使われてきた。

ホテルはかつての獄舎をつなぎ合わせて造られた全48室のスイートで構成され、星野リゾートによれば最上位カテゴリーには「イレブンセルデラックス」の名が付けられている。改修では、漆喰の下に隠れていたレンガの躯体を露出させ、歴史的な天井の意匠を残しつつ、新たに鉄骨の柱や木製パネル、照明を加えた。中庭には白い幾何学模様の通路が設けられている。かつて独居房や面会室があった別棟にはレストランが入り、旬の飲み物や菓子、書籍を楽しめるメインラウンジ、食前酒やバーサービスを提供するダイニングラウンジも備える。一部のダイニング空間は最大6人まで利用できる。

星野リゾートは、改修に携わった4人の専門家の名前も明らかにしている。東環境・建築研究所代表の東利恵氏は、この場所がもともと備えていた「非日常」の感覚を出発点にしたとされる。ランドスケープはオンサイト計画設計事務所の長谷川浩己氏が担当。ICE都市・照明計画研究所の武石正宣氏は、間接照明によって空間に奥行きと豊かさを加えたと評価されている。そして安井建築設計事務所代表の佐野吉彦氏は、文化的・歴史的価値の保存を最優先に据えてプロジェクトを主導したと星野リゾートは説明する。

星野リゾートによれば、宿泊料金は1泊14万7000円(税・サービス料込み、食事別)から。朝食は和食または洋食のセットが4800円、「明治スタイル」の朝食が6380円で、軽食のアラカルトも用意されている。

星野リゾートは本プロジェクトを「From Historic Walls to Timeless Elegance」というコンセプトのもとに位置づけ、明治期以降の日本が取り入れた西洋由来の文化的要素を宿泊体験に織り込んだと説明する。そして、観光収入によって文化財自体の維持を賄う「文化財の循環」というモデルを打ち出したとしており、保存のための補助金に頼ったり、単に博物館として保存したりするのとは異なる道を選んだ形だ。

これは、floortokがこれまで追ってきた再開発とは異なる種類の「用途転換」だ。ロンドンでハイアットが手がけた駐車場ビルの改修や、ローズウッドが計画する六本木の新タワーとは違い、国指定重要文化財には民間の建物にはない制約が伴う——何を加え、何を取り除き、どう手を入れられるかは、建物の構造だけでなく、その保護された地位にもよって縛られる。星野リゾートの賭けは、その制約自体を商品にすることだ。改修前からすでに「非日常」の感覚を備えていたと同社が語るこの建物で、かつての獄房を転用したスイートに高い宿泊料金を課すことが成り立つのは、客が歴史そのものに対価を支払う場合に限られる。1泊14万7000円からという価格が持続するのか、それとも「元監獄に泊まる」という目新しさが薄れれば失速するのかは、開業だけでは答えの出ない問いだ。