floortok

ジャーナル

·
ニュース

三越伊勢丹、10月の国内売上高10.9%増 訪日客数は減る中で海外顧客売上高は38.9%増

三越伊勢丹の国内百貨店事業は10月、宝飾品やハンドバッグが牽引し10.9%増となり、三越銀座店は28.4%増と好調だった。注目は海外顧客売上高で、全国の訪日客数が減少する中でも38.9%増を記録。来店客数ではなく、一人当たりの購買力がものを言う構図が鮮明になっている。

暖かな照明の下の百貨店の宝飾・時計売場を描いたイラスト。シルエットの販売員がケースを一人の着飾った客に見せており、背後の通路はまばらで、客数は少なくとも一人当たりの購買力が高いことを示唆している。
イラスト:floortok.com

三越伊勢丹ホールディングスは11月2日付の月次売上速報で、国内百貨店事業の10月売上高が前年同月比10.9%増だったと発表した。首都圏の(株)三越伊勢丹5店舗の合計は12.4%増、地域百貨店は7.9%増、海外顧客売上高は38.9%増。同社によれば、9月よりも前年のハードルが高まる中でもこの高い伸び率を維持したという。

店舗別に見ると、三越銀座店が28.4%増と最も高く、岩田屋三越(福岡)が21.8%増、伊勢丹新宿本店が12.5%増、三越日本橋本店が6.8%増と続いた。一方で全店が好調だったわけではなく、広島三越は9.1%減、伊勢丹立川店は6.6%減、伊勢丹浦和店は3.9%減となった。

国内売上の伸びについて同社は、宝飾時計やラグジュアリーブランドのハンドバッグなど高付加価値な商品が牽引したと説明。全社ベースで見ると、美術・宝飾・貴金属は10月に24.2%増だった。伊勢丹新宿本店で開催した「サロン ド パルファン 2026」は新たな顧客層の開拓につながり、岩田屋三越の外商向けイベント「逸品會」は大きな実績を上げるとともに既存の上得意客との関係深化に寄与したという。海外顧客については、客単価・買上客数ともに前年を大きく上回って推移したとし、今後は購買データに基づくリコメンド機能を持つアプリや海外顧客向けの外商サービスを通じて、国内顧客同様により安定した成長を目指すとしている。

いずれの数字も、日本経済全体の動きと照らし合わせる価値がある。国内売上高の10.9%増は、総務省統計局が公表した直近9月の消費者物価指数(総合、前年同月比2.1%)を大きく上回っており、floortokの見立てでは単なる値上がりではなく実質的な増収といえる。より際立つのは海外顧客の数字だ。観光庁(JNTO)が公表した直近の9月データでは、訪日外客数は全国で前年同月比5.0%減少し、うち中国からの訪日客は44.5%減だった。つまり三越伊勢丹の海外顧客売上高38.9%増は、訪日客が増えたのではなく減少する中で達成されたことになり、客数の拡大ではなく顧客一人当たりの購買額の伸びが主因だとうかがえる。宝飾品についても同様の留保が必要だ。直近9月の腕時計・指輪の消費者物価は前年同月比16.2%上昇しており、全社の宝飾品24.2%増の一部は単価上昇によるものと見られる。ただし、それでも売上の伸びは物価の伸びを大きく上回っている。

この構図は今後の注目点を示唆している。物価上昇を上回るペースで伸びる国内需要は、宝飾品やハンドバッグを軸にした堅実な成長に見える一方、縮小する訪日客の中で一人当たり購買額に頼る海外顧客の売上は、中国からの訪日客の落ち込みが長引けば持続性に疑問符がつく可能性がある。

三越伊勢丹 2026年10月 店舗別売上高

前年同月比(%)

+28.4%三越銀座店+21.8%岩田屋三越+12.5%伊勢丹新宿本店+6.8%三越日本橋本店−6.6%伊勢丹立川店−9.1%広島三越
(株)三越伊勢丹ホールディングス 2026年10月売上速報 · 作図:floortok