日本の空港店舗売上に明暗、分かれ目は免税店の中国依存
空港各社の自社決算を読むと、店舗売上の伸びは福岡・那覇・関西・新千歳で最も大きく、成田とセントレアでは伸びがほぼ止まっている。一方、中国発の団体旅行に支えられてきた免税店(羽田第3ターミナルとセントレア)の売上だけは、どちらの決算でも減少している。
floortokは、日本の主要空港運営会社8社の決算資料を読み込み、各社がそろって公表していない一つの指標——空港で実際にいくら買い物されているか——を横並びにした。2026年3月期の数字を見ると、業界は二極化している。店舗売上の伸びは東京から離れた地方空港ほど大きく、中国発の団体旅行に支えられてきた免税店の売上だけは、どの決算資料でも軒並み縮んでいる。
伸びが最も大きいのはどこか

西日本鉄道、三菱商事、シンガポールのチャンギ・エアポート・グループなどが名を連ねるコンソーシアムが運営する福岡国際空港は、floortokが確認した中で最も伸び率が大きかった。自社の決算資料によると、直営物販事業(主に国際線エリアの免税店)の売上高は2026年3月期に294億円となり、前年の248億円から18.5%増加した。3年前の82億円から3倍以上に伸びたことになる。セグメント利益は27%増の52億円で、会社全体でも初の年間純利益を計上した。2025年12月に国際線エリアに13店舗を新規出店したほか、同年11月には免税のスイーツ・食品ゾーンも新設した。総旅客数は2883万人、うち国際線旅客数は10%増の939万人だった、と同社は述べている。
関西国際空港・伊丹・神戸の3空港を運営する、オリックスとヴァンシによる関西エアポートも同様の伸びを示したが、自社の店舗売上単独の数字は開示していない。6月に公表した決算報告書によれば、免税店・店舗・レストラン・ラウンジ・賃料・自社ホテルなどを合わせた非航空系収入は、前年の1471億円から9.7%増の1614億円と過去最高を更新した。内訳として、自社運営の免税店売上は14%増、自社運営の店舗・レストランは5%増だったといい、同社は下期に中国人観光客の需要が弱まったものの、他の市場がそれを補って余りある伸びを見せたとしている。他の市場が補ったという構図は、福岡の数字とも符合する。
関西エアポートが運営する3空港のうち3番目の神戸は、決算に数字が出る売り場というより、グループで最も新しい売り場だ。店舗売上は個別に開示されておらず、その取扱高は前述の1614億円の中に含まれる。報告書が示すのは、そこで消費する旅客の流入だ。神戸空港は2025年4月18日に第2ターミナルの供用を開始し、同日に国際線チャーター便の初便が就航した。2026年3月期の旅客数は16%増の417万人と過去最高を記録し、うち53万人が新たな国際線チャーター便の利用者(うち外国人旅客44万人)で、国内線旅客は1%増の364万人だった、と同社は述べている。同じ4月には第1ターミナル3階にフードコート「神戸ソラもぐ」も開業した。国土交通省の暦年ベースの集計では、神戸空港の2025年の旅客数は13.5%増の406万人、2026年1〜7月は5.4%増の234万人で、7月単月は6.1%増、国際線旅客は前年同月比32%増だった。
大阪の国内線専用空港で、関西国際空港に次いで3空港で2番目に旅客の多い伊丹は、神戸とは対照的な存在だ。成熟した空港で、免税店は一切ない。関西エアポートは伊丹についても店舗売上を個別には示していないが、報告書によれば、グループの店舗収入は直営・テナントともに通期で増収となり、その伸びを牽引したのは関西国際空港の国際線商業エリアだった。同社の集計では、2026年3月期の伊丹の旅客数は5%増の1,629万人で、すべて国内線の利用者だ。国土交通省の暦年ベースの集計では、2025年は6.7%増の1,618万人だったが、2026年1〜7月は0.9%増の910万人にとどまり、7月単月は1.4%減だった。今年に入って国内線の客層の伸びは止まっており、国際線の出発客を持たないターミナルが売れる量には上限があることを示している。
新千歳空港など道内7空港を運営する、三菱地所を中心とする北海道エアポートは、ターミナルビル事業の売上高が前年の412億円から8.9%増の449億円になったと開示した。主な要因はテナント賃料収入の11.3%増で、新千歳空港の旅客数は過去最多となる2602万人を記録した。同社は物販スペースの大半をテナントに貸し出す方式をとっており、自社が直接運営する店舗の売上高(24億4800万円、前年は24億5000万円)はほぼ横ばいの開示にとどまる。賃料収入の伸びと店舗売上の伸びは、たとえ両方が伸びていても同じ指標ではないことを示す一例だ。
沖縄の玄関口のターミナルを運営する那覇空港ビルディング(沖縄県が株式の4分の1、免税店を運営するDFSが14.6%を保有)は、自ら店を構える小売業者ではなく家主だが、テナントの売上に連動して家賃が動く家主である。2026年3月期の売上高は12.9%増の172億円。同社はその要因を、過去最高の2,346万人(8.0%増)の旅客数に伴う歩合家賃と施設使用料収入の増加としている。同社の報告書には、他空港の構図に関わる点が二つある。一つは、日中関係の悪化により2025年12月から中国路線の大幅な減便が続いたにもかかわらず、台湾・韓国路線の新規就航や増便がそれを補い、国際線旅客数が過去最高の413万人(28.5%増)に達したこと。もう一つは、ターミナルの店舗が向き合う客層の大半が国内線客であることで、旅客のうち1,932万人(4.5%増、こちらも過去最高)は国内線の利用者だった。同社はこの1年、国内線と国際線を結ぶ2階通路に期間限定のポップアップ店舗エリアを整備し、国際線イベントスペースでは沖縄県内のクリエイターや人気ブランドが週替わりで出展する「GAJUMARU」を開いた。国土交通省の集計では、2026年1〜7月の那覇空港の旅客数は1,342万人と前年同期比4.0%増だったが、7月単月は0.8%増にとどまった。
羽田空港各ターミナルの店舗を運営する(第3ターミナルは51%子会社のTIATを通じて)日本空港ビルデング(東証9706)は、より緩やかながらプラスの伸びを示した。2026年3月期の施設内店舗売上高は前年比2.8%増の1127億円で、うち国際線エリアの店舗が2.0%増の972億円、国内線エリアの店舗が7.8%増の156億円だった。直近の四半期(2026年4〜6月期)はさらに伸び、売上高は9.3%増の293億円。同社は、羽田の免税店売上が四半期として過去最高を記録したと明らかにした。
横ばい、あるいは減少している空港
依然として国が全額出資する成田国際空港は、回復の勢いが頭打ちになった様子を最もはっきり示している。自社が直接運営する店舗・飲食の売上高(Fa-So-Laおよび自社レストラン)は、2023年3月期の281億円から翌期738億円、さらに翌期948億円へと、旅客の戻りとともに急拡大してきた。だが2026年3月期は前年比わずか1.0%増の957億円にとどまり、伸びはほぼ止まった。テナントへの賃貸部分も含む物販事業全体の売上高は2.6%増の1268億円とやや上向き、テナント自身の売上も含む空港内の全店舗の取扱高は2022億円に達し、3年連続の過去最高を更新したと同社は述べている。一方で2027年3月期については、改装のための店舗休業を理由に、物販事業の売上高が2.1%減の1242億円になるとの見通しを自ら示している。
中部国際空港(セントレア)も足踏みが続く。2026年3月期の構内店舗・レストランの売上高は前年比わずか0.4%増の322億円だった。この平均値の内側では明暗が分かれており、一般物販は8%増の94億円、飲食は4%増の69億円だった一方、免税店は5.0%減の160億円だった。同社はこの減少を、中国便の減便によるものだと説明している。この流れは新年度に入っても続いており、2026年7月単月では免税店売上が前年比10%減の11億1800万円、一般物販は6%増の7億8300万円、店舗売上合計は5%減の24億4300万円となった。
最も大きく落ち込んだのは、日本空港ビルデングが51%出資する東京国際空港ターミナル(TIAT)だ。TIATは羽田第3ターミナル内の免税店やブランドブティックを自ら運営し、親会社の連結数値に含まれると同時に単独でも決算を公表している。自社の事業報告書によれば、2026年3月期の商品売上高は464億9百万円で、前年のピークだった543億8千8百万円から14.7%減少した。同報告書は昨年11月以降の中国の日本への渡航自粛と、中東情勢の緊迫化に伴う減便を要因に挙げている。総売上高も3.6%減の1008億円だった。つまり同じグループの中で、羽田の店舗全体は伸びている一方、中国人旅客への依存度が最も高い国際線免税フロアだけが伸びていない。
共通する背景
並べてみると、明暗を分けているのは立地そのものというより、それぞれの店舗がどの客層に依存しているかだ。福岡、那覇、関西エアポート、北海道エアポートはいずれも、国内旅行や台湾・韓国・東南アジアからの旅客、福岡と那覇の場合は新規出店による売り場拡大など、特定の一市場に頼らない需要の回復を取り込んでいる。那覇はその最もわかりやすい例で、12月以降に中国路線が減便されても国際線旅客数は過去最高を更新した。一方、羽田第3ターミナルとセントレアの免税店は、中国人旅客の消費への依存度が最も高い、より狭い賭けだった。両社とも自社の数字が落ち込んだ理由として中国を挙げている(TIATは渡航自粛、セントレアは路線の減便)。これは需要の問題であると同時に、立地と品揃えの問題でもある。特定の客層向けに設計された免税フロアは、賃料収入のようには容易に組み替えられない。8社のうち家主型の2社、北海道エアポートと那覇空港ビルディングが、免税店という重しを抱えずに伸びているのは、その裏返しかもしれない。
各社の決算資料は、それぞれ「好調な一年」として自社の数字だけを語る。だが8社を並べると、より重要なのはその開きの大きさだ。同じ12カ月の間に、福岡の直営物販は18.5%増、羽田第3ターミナル(TIAT)の免税店は14.7%減——その差は33ポイント以上に達する。両者は、名目上は同じ航空需要の回復という波に乗っているはずの空港である。
floortokは現在、こうした数字を空港ごとに、各社の開示資料に基づいてMarket Data(/indicators、Airportsグループ)に収録している。セントレアは月次、羽田は四半期ごとに更新される。
前年比、各社独自の定義による(%)