花王の化粧品売上、国内市場縮小の中で10%増 キュレル・KATE・新SOFINAが牽引
花王の2026年1〜9月期決算では、同社が示す国内化粧品市場の需要がわずかに縮小する中、化粧品事業の売上高は10%増えた。日本の美容フロアで最も競争の激しい売場における、シェア獲得の物語だ。

花王(かおう)は11月5日、2026年1〜9月期(9カ月累計)の連結決算を発表し、売上高が前年同期比7.1%増の1兆3,193億円、営業利益が28.1%増の1,465億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が24.0%増の1,051億円になったと明らかにした。「カネボウ」「センサイ」「キュレル」「KATE」などを展開する。
7.1%の増収のうち4.0ポイントは為替換算によるもので、為替の影響を除いた実質増収率は3.1%(数量0.2%減、価格3.3%増)にとどまる。営業利益には第1四半期に計上した土地売却益115億円も含まれている。
縮小する市場の中で伸びる化粧品事業
「カネボウ」「センサイ」「キュレル」「KATE」「SOFINA」を擁する化粧品事業は、売上高が10.1%増の1,994億円、営業利益は29億円から98億円へ69億円増え、花王の消費財4事業の中で最も伸びが大きかった。日本の化粧品売上高は7.2%増の1,320億円となった。花王は、同じ9カ月間について小売店の販売実績は前年を上回ったとする一方、国内需要を示す消費者購入調査データではわずかに縮小したとしている。
花王は国内での増収要因として、デリケートケアブランド「キュレル」の新製品投入と季節施策、メイクブランド「KATE」の『小売との協業による売場拡大』を通じた認知向上、そして8月に「SOFINA」ブランドで発売した新ライン「SOFINA BASIC+」の好調な立ち上がりの3点を挙げた。同社の内訳によると、化粧品事業の実質6.5%増のうち5.7ポイントは数量増、価格による押し上げはわずか0.7ポイントで、伸びの大部分は数量によるものだった。
海外ではアジアの化粧品売上高が23.8%増の406億円となり、為替を除いた実質でも11.1%増だった。中国での取り組みの進展や、タイでの「KATE」「KANEBO」のプレステージブランド育成が寄与したという。欧州は公表ベースで7.3%増収となったが、為替を除いた実質では2.7%減で、花王は市場の減速が原因としている。高級ブランド「SENSAI」は新製品が好調で増収だった。アメリカ大陸は実質で4.5%減だった。
実質前年同期比(%)
日本の美容フロアやドラッグストアの棚の大きな部分を占める花王にとって、同社自身の需要指標が縮小する中での増収は、市場全体の底上げというより、シェアを奪う物語と読める。KATEの『小売との協業による売場拡大』という表現は特に示唆的だ。これは価格戦略ではなく売場づくりの打ち手であり、競争の激しい化粧品売場で数センチの棚を広げるには、たいてい誰かがその分を失う。
花王自身の内訳(実質成長の大半が数量による)はすでに実需の伸びを裏付けているが、公的統計も同じ方向を示す。ただし対象期間は花王の9カ月累計より短く、より直近のものだ。総務省の消費者物価指数によると、直近公表の2026年9月時点で全国の化粧品価格は前年同月比3.4%上昇。経済産業省の商業動態統計によると、KATEやキュレルが実際に並ぶ売場に近いドラッグストアのビューティケア(化粧品・小物)販売額は、直近公表の2026年8月時点で前年同月比3.3%増だった。この直近1カ月の数値と比べても、花王の国内化粧品売上高の伸び(7.2%増)はおよそ2倍の水準にあたり、同社が言う『需要自体はさほど伸びていない市場』でシェアを獲得している姿と整合的で、単に値上げの効果に乗っているわけではなさそうだ。
通期見通しは8月の上方修正から据え置き、売上高1兆8,000億円(6.6%増)、営業利益1,900億円(16.2%増)、純利益1,350億円(12.4%増)を見込んでいる。